「私の好きな作家シリーズ」と題して数年前にローズソファを制作した。
これは倉俣史郎というデザイナーの作品からイメージしたものだった。

このシリーズの第二弾を制作しようと思う。
江戸川乱歩の小説『人間椅子』をご存知であろうか?
彼の代表作の一つであり、筋書きは少々不気味である。

容姿が恐ろしく醜い椅子職人がいた。
そのため人と接することを嫌ったが、職業柄それは問題にならず、腕は確かでよい仕事をした。
ある日来店した美しい女性が椅子を特注したのだが、彼は遠めに見た彼女にすっかり一目ぼれをしてしまった。

抱きしめたいというエロ衝動は突き上げるのだが、当然自分のこの姿では会えるはずもない。
悶々とした日々が続いたがある日とんでもないことを思いついた。

「そうだ、自分の作った椅子の内部に自分が入り込み、そのまま彼女の部屋に納品されればいい」

さすが一級の椅子職人。ありえない妄想を具現化し、まんまとその女性の家に椅子となって入り込み、彼女のぬくもりと感触を味わい尽くすのである。
“何たる変態小説の極み!”私は感動で打ち震えてしまった。・・・・

ということで、第二弾はこれに決定!!
イメージ図はこんな感じである。
得意の風船構造に表面は半透明のビニールで、中の変態男は私・・じゃなかった・・男が微妙に透けて見えるか見えないかでたたずんでいる・・いや座っている。
人間椅子スケッチ
と、ここまで書いて久しぶりに「人間椅子」を再読した。
椅子が出来上がるまでの事情は記憶違いな点も多々あった。
私がそのように望んだからなのであろう。
いずれにせよ根本的なところは外していない。
やはり名作である。

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