
昨日、東京都都庁から
「北川さんの壁画が予定変更して保存されることになりました」と電話があった。
この作品は5年前ぐらいに都庁が企画した
ストリートアートペインティングという事業のもと制作されたものである。
今年の夏ぐらいに、都庁から老朽化を理由に
「消す予定である。」と通知があった物件である。
この作品が結局消されることもなく保存されることになったというわけだ。
こうなったいきさつの理由を私は知っている。
私以外にもこの企画によって10人弱ぐらいの作家が壁画を制作したわけだが、
そのうちの何人かの作家が消去されることを拒否したためだ。
私と言えば、消してもいいか電話があったとき、
あっさり、「いいですよ。」と答えたのだ。
たぶん作家の中でも一番即答タイプであったろうと推測する。
こう書くと、早く消してほしいと思っているのだろう、と思われるかもしれないが、
そうではない。
この、「ジッパーⅠ」は割と世の中の認知度が高く、
いまだに「この作品のことは知っている」という人によく会うし、
メディアでの露出度も高い。
私の他の作品は、インスタレーション的なものが多いため現存するものは少ない。
その中にあって、壁画というものは長くそこに存在する。
私にとっても、名刺代わりになっている作品である。
では、なぜ、そんなにあっさりと世の中から削除されることを承諾したのであろうか。
たぶん、それは私の中に
『形あるものはいつかなくなる。またそうであるからこそ美しい』という美意識があるためだろう。
所有者から望まれなくなったときがその作品の寿命であるとさえ思っている。
保存決定の電話があったとき「あっそうですか。」と
他人事のように返事をしたことを覚えている。
しかし、やはり私は本音を言うと・・・うれしかった・・・。
ごねた作家にはお礼を言おうと思っている。